加齢と食欲


高齢者の食欲
高齢者では若年者に比べて食欲が低下している場合が多くなります。その理由はいくつも考えられます。個人差は大きいのですが、若いときに比べると心臓や呼吸器の能力が衰えて、また骨や関節に障害が生じて、高齢者では多くの人がスポーツなどの運動をしなくなります。この結果、筋肉が萎縮し、一方で脂肪の蓄積が増えて、同じ体重でも脂肪の割合が高くなっています。

筋肉はエネルギー消費がきわめて高いのですが、脂肪組織はエネルギーをほとんど使いません。からだが消費するエネルギー量が少なくなり、食事からエネルギーをたくさん摂らなくてもよくなります。高齢者では若い人よりも食欲が減って、若い人ほど食べられなくなります。


味覚や嗅覚、視覚も食欲に影響
味覚や嗅覚も食欲に大きな影響を与えます。これらの機能が低下して、料理の味や香りを楽しめなくなれば、当然食欲も進まなくなります。

色も食欲を増進させる大事な要素です。老人性の白内障は程度の差はあれ、ほとんどの高齢者にみられます。水晶体が黄色く濁ると、見るものすべてが黄色味がかって見えます。鮮やかな配色の料理の盛りつけも、若い人ほどは食欲につながらないでしょう。


食欲の低下には様々な原因
高齢者では、うつ状態にある人の割合が高いと言われています。気力が失せ、あるいは生きる希望がなくなれば食欲も落ちてきます。また高齢者に多い心不全や慢性気管支炎などの病気では、体力が消耗し食欲も低下する場合が多くあります。さらに例えば心不全の時に使われる強心剤など食欲を低下させる作用を持つものもあります。

リウマチや腰痛症などは高齢者に多く、そのために使われる痛み止めも、胃腸障害の原因になります。

亜鉛は味覚の機能のために大事なミネラルですが、最近は降圧剤や脂質異常症(高脂血症)治療薬などの副作用や、骨粗鬆症の予防、治療ためのカルシウム製剤の取り過ぎなどで亜鉛欠乏症になり、味覚障害になる高齢者も多くいるようです。


からだを動かすことが大切
食欲が低下して食事が摂れなくなると、体力がなくなったり、病気への抵抗力が落ちたりします。エネルギー摂取量が少ないと、からだは筋肉を減らしてそこからエネルギーを得ようとします。ミネラルやビタミンなどの必須栄養素も足らなくなり、さまざまな障害がでてきます。

高齢者には、からだを動かすことが一番大切です。運動をして筋肉を増やす。食欲を増進させて健全な食生活を守り、丈夫なからだをつくっていくことが健康長寿の最も基本です。