高齢者の人権


高齢者の人権、財産等の権利擁護
高齢者の人権や財産等の権利を守ることは、超高齢社会において重要なことです。今後独居高齢者や夫婦二人世帯の増加により、さらに認知症や失語症など、コミュニケーションが困難な状態や、判断能力が低下した場合にも、家族や後見人の支援が必要です。また地域の支援活動等も重要となります。

成年後見制度は高齢社会への対応及び知的障害者・精神障害者等の福祉の充実の観点から、自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を旨として、柔軟かつ弾力的な利用しやすいことを目的にしています。


尊厳ある人生とは
尊厳ある人生とは 自己決定できること、認知症となっても地域が支えることができる、さらに他者から人権や財産を侵されないことが必須条件です。

行政的には平成18年度から市町村が設置する地域包括支援センターにおいて相談窓口をおき、公的に「権利擁護」を積極的に支援することになります。その内、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業等の利用の支援等が重要となります。

人権擁護
人権擁護については、法務省の管轄で、あらゆる人権の侵害に対して申し立てがあれば、保護の対応がなされます。


各地域の法務局に窓口があります。法務局は、法務省の地方組織の一つとして、国民の財産や身分関係を保護する、登記、戸籍、国籍、供託の民事行政事務、国の利害に関係のある訴訟活動を行う訟務事務、国民の基本的人権を守る人権擁護事務等を行っています。


法務局の組織は、全国を8ブロックの地域に分け、各ブロックを受けもつ機関として「法務局」があります。この法務局の下に、都道府県を単位とする地域を受けもつ「地方法務局」が置かれています。法務局、地方法務局及び支局では、登記、戸籍、国籍、供託、訟務、人権擁護の事務を行っており、出張所では主に登記の事務を行っています。


財産保護
財産保護については、成年後見制度の利用が最も勧められます。

認知症や知的障害、精神障害等を理由に判断が困難な場合に保佐人、補助人、後見人をつけることができます。判断力が低下した場合に早期に申請する必要があります。
申請は家庭裁判所に行いますが、地域包括支援センターに相談することも可能です。


地域福祉権利擁護事業
介護福祉サービスの利用に際して援助が必要な場合には、地域福祉権利擁護事業の利用が勧められます。

この事業は第一に介護保険のサービスなど、福祉サービスの利用援助がなされます。具体的には福祉サービスについての情報の提供や、福祉サービスの利用手続き、支払いの代行、苦情手続の代行が行われます。

また、日常的な金銭管理サービスとして、年金や福祉手当の手続きの代行や税金、社会保険料、公共料金、医療費、家賃等の支払の代行が行われます。さらに書類等の預かりサービスとして、金融機関の貸し金庫にて、証書 (年金証書、預貯金の通帳、権利証、保険証書)や印鑑 (実印、銀行印)等を預かることもできます。

 

  高齢者虐待防止

高齢者虐待とは、在宅や施設内において、高齢者の人権を無視して、身体的への暴行、心理的な外傷を与える行為、養護の著しい怠慢、財産の不当な処分等を行うことです。
 高齢者の人権・利益を守るため、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、虐待を受けた高齢者の保護のための処置、擁護者の負担軽減を定めた高齢者虐待防止・養護者支援法(高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)が平成17年11月1日に国会で可決成立し、平成18年4月1日より施行されました。

 


家庭内虐待と施設内虐待
高齢者虐待は、家庭内虐待と施設内虐待の二つに分離され、その種類には身体的虐待、心理的虐待、世話の放任、遺棄、経済的虐待があります。

高齢者虐待が起こる要因には介護者の負担がもっとも大きいとされますが、その背景には認知症や過去の人間関係など、様々な要因があると考えられます。また日本の風土においては虐待に対する当事者の意識が低く、虐待そのものが表に出にくい状況があります。


高齢者虐待の現状
高齢者虐待の現状は 平成16年度に医療経済研究機構によって行われた「家庭内における高齢者虐待に関する調査」によれば、被害者は平均81.6歳で、女性が4分の3を占めていました。要介護者がほとんどで、一部には自立もしくは「非該当」の方もみられました。

虐待の発見者は介護支援専門員、訪問看護・介護、医療機関が多く、虐待者は息子が多く、その次に配偶者、嫁となっていました。中でも息子による経済虐待が目立っていました。
虐待の種類としては心理的虐待が50~70%を占め、身体的虐待や介護・世話の放棄・放任が約50%みられました。また、生命に危険のある虐待は約10%にみられ、認知症や過去の人間関係が問題で、介護者の精神的、身体的負担が要因となっていました。


高齢者虐待防止対策
高齢者虐待防止対策は、予防が重要であることはいうまでもありませんが、それには一般市民、関係者への啓発が欠かせません。高齢者虐待防止を実際に地域で行うために、平成18年度から市町村が設置する地域包括支援センターは通報受理機関になります。


さらに生命に危険がある場合には地域包括支援センターや警察への通報が必要です。場合によっては措置制度の利用により緊急にショートステイの利用等をはかり、相談、助言を通じて介護者を支援する必要もあります。
経済虐待には成年後見制度の利用を推進することも有用な手段となります。虐待対策には相談助言が有効であり、加害者に対する支援が最も重要であることはいうまでもありません。