寝たきりにならず生きぬこう

寝たきりになった状態を想像出来ますか? 

見える世界は天井の節目しかないなんて想像できますか? 

自力で食事や排泄が出来ない状態を想像出来ますか? 

自分の意思で身動きできない状態を想像出来ますか?

誰もが避けたい状態が、寝たきりです。何が何でも避けたいのですが、人間は老化や運動不足などが原因で筋肉がやせ衰えて来て、やがてはカラダを自力で支えられなくなり、寝たきりになってしまいます。


厚生労働省の国民生活基礎調査(平成22年度版)によると、65歳以上の人の要介護の直接原因は、

1位 脳卒中(24.1%)

2位 認知症(20.5%)

3位 高齢による衰弱・老衰(13.1%)

4位 骨折・転倒(9.3%)

5位 関節疾患(7.4%)

6位以下、パーキンソン病、心臓病、糖尿病、呼吸器疾患、ガン、と続く。


統計データで注目すべきは、このうち認知症と老衰は別にすると、血管の老化による脳卒中(24.1%)、4位と5位を一緒にした骨折・転倒・関節疾患(16.7%)の大きくは2つの原因が考えられます。


要介護の一歩手前の要支援で原因別データで見てみると、

1位 関節疾患(19.4%)

2位 高齢による衰弱・老衰(15.2%)

3位 脳卒中(15.1%)

4位 骨折・転倒(12.7%)

5位 心臓病(6.1%)

6位 認知症(3.7%) 


という結果で、1位と4位を合わせた骨折・転倒・関節疾患(32.1%)は他を圧倒する原因になっています。


つまり、足・膝・腰の関節、下肢に問題を抱えていて歩けない人が寝たきりの原因の大部分を占めていることがわかります。


筋肉が減り衰えることが原因して、歩く、座る、食べるなどの生活行動がで きなくなって、寝たきりになる場合がほとんどです。骨粗鬆症、それから来る骨折、転倒、交通事故などの元の原因も、筋肉が減り衰えること、であると言えます。


骨を外部の衝撃から防護したり、転倒や階段からの落下を防ぐために筋肉づくりをすることが必要です。


血中のぶどう糖を最も大量に取り込んで分解するのは筋肉ですし、また、筋肉を作り鍛えることは、血中の 中性脂肪の処理能力を高めてやることにもなり、糖尿病はもちろん、脳卒中・心臓病など血管の老化による病気を予防することにつながります。


筋トレをしながら運動不足を解消し、脚腰を鍛えて、自力で歩ける状態を維持できれば、人生最悪の状態である寝たきりを避けることが出来るのです。


詳しくは→厚生労働省の国民生活基礎調査(平成22年度版) をご覧ください。

寝たきり生活しないために!

[ 原因や誘因の発生予防 ]

  • 寝たきりの原因となる疾患の第一位は脳卒中(約3~5割)で、第二位が老衰(約2割)、第三位は骨折(約1割)となっています。したがって、脳卒中と骨折が寝たきりの原因の約半分を占めることになり、この二つの病気を減らすことが寝たきり予防の第一歩と言えます。
  • 脳卒中の基礎疾患である高血圧、動脈硬化、糖尿病等の成人病や、骨折の基礎疾患である骨粗鬆症の予防には、ふだんから、①適度な運動 ②塩分を控えバランスの採れた食生活(栄養)、③積極的な余暇の活用(休養)を心がけ、定期的に検診を受けて成人病の早期発見・早期治療に努めることが大切です。
  • 完治が困難な疾病にかかった場合でも「一病息災」の考え方で、病気と上手に付き合っていけば、寝たきりにならずに長寿を全うすることも可能です。

寝たきりは 寝かせきりから 作られる 過度の安静 逆効果

[ 作られた寝たきりの防止 ]

  • 高齢者は、若い人と異なり、1週間寝込んだだけで、また、点滴注射等の為に臥床状態が続くだけで、筋肉の力が衰えたり、起き上がろうという意欲が無くなり、簡単に寝たきりになってしまいます。 一方、じっと寝かせておく方が、本人も楽だし、介護する側も手がかからなくて楽だと錯覚しがちですが、実は、寝かせきりにすることによっていろいろな病気(肺炎、床づれ、ボケなど)を併発することが知られています。
  • 寝たきりを作らない為には、日常生活活動(ADL)の維持を重視し、風邪やケガでも素早く治療して、安静期間をできるだけ短くする心がけが大切です。
     

リハビリは 早期開始が 効果的 始めよう ベッドの上から訓練を

[ 早期リハビリテーションの重要性 ]

  • 従来、我が国では、脳卒中の発作か起きた場合、安静第一が治療の基本と考えられてきました。 そのため、脳卒中のリハビリテーションの開始時期が、発作後何ヶ月も経てからと言うことが普通でした。 しかしながら、リハビリテーション医学の進歩により、早く始めれば始めるほど、機能の回復が見込まれるということが明らかになってきました。 特に、意識がはっきりしていて全身状態が良ければ、脳卒中の発作直後、遅くとも一週間以内には、リハビリテーションを開始すべきだとさえいわれています。

くらしの中での リハビリは 食事と排泄 着替えから

[ 生活リハビリテーションの重要性 ]

  • 脳卒中、骨折等で入院して、リハビリテーションの結果歩行機能が回復しても、退院後自宅に帰ってから徐々に機能が低下して、歩けなくなってしまったという例が少なくありません。
  • したがって、家庭に戻ってからも、回復した機能が維持できるよう、リハビリテーションを続ける必要があります。とはいっても、家庭で医療機関と同じレベルのリハビリテーションをする必要はありません。日常生活の中であたりまえの、そしてもっとも基本的な動作(食事、排泄、着替えなど)を、体を動かせる範囲で、なるべく元気な頃と同じように行うよう心がければよいのです。これを「生活リハビリテーション」といいます。


朝おきて まずは着替えて 身だしなみ 寝食分けて 生活にメリハリ

[ 寝・食分離をはじめ、生活のメリハリの必要性 ]

  • 寝る場所と食事を取る場所の区別がつかない生活パターンは、外へ出る意欲を低下させ、閉じこもりから寝込み、ひいては寝たきりへとつながって行きます。身体に障害が残っているからといって、一日中に寝間着を着たままでいたり、寝床で食事をとったりすることが習慣になってしますと、生活のリズムにメリハリをなくしてしまいます。
  • このことは、施設入所中の高齢者にも当てはまることです。病状が安定した後でも、ベッドの上で食事も排泄も行うような療養生活のあり方は自立のチャンスを奪うことにもなりかねません。食事の時間は車椅子に乗って食堂へ行くという生活パターンを作り上げたいものです。
    一方、身だしなみを整えることは、外出の予定がなくても、気分の転換になったり、他人に良い印象を与えることで自分に自信が持てるなど、活動的な生活への動機づけとなります。
  • 身だしなみの第一歩は、清潔です。皮膚、口腔、頭髪、衣服などを常に清潔に保つことは、臭気を防ぐとともに、感染症の予防にとっても大切です。


「手は出しすぎず 目は離さず」 が介護の基本 自立の気持ちを大切に

[ 主体性・自立性の尊重 ]

  • 従来、我が国では、高齢者にはできるだけ何もさせずにすごしてもらおうと言う考え方がありましたが、このようなことはかえって高齢者の運動機能を低下させ、行動力の減退を招き、ひいては寝たきりのきっかけを作ります。
  • 時間がかかっても、自分でできることは自分で実行してもらうよう周囲が配慮し、高齢者が自力で実行するという気持ちを持ち続けられるよう支援して、心身の機能の低下を招かないようにすることが大切です。
  • また、安易なオムツの使用は、自尊心を傷つけることで生活意欲を奪い、社交性を低下させ、結果として寝たきりに陥りやすくなりがちです。排泄も可能な限り自力ですることが大切です。


ベッドから 移ろう移そう 車椅子 行動広げる 機器の活用

[ 機器の積極的活用 ]

  • 寝たきり状態から自立を図って行く為には、確証の機器を活用することが効果的です。布団よりもベッドの方が、楽に起き上がれますし、車椅子やポータブルトイレ(腰掛け便座)も使いやすくなりますから、できるだけベッドを使いたいものです。ギャッジベッド(特殊寝台)といって、頭部や脚部の傾斜角を自由に変えられるものがあります。
  • ベッド上で体を起こすことができる人は車椅子を利用して、短時間でも毎日ベッドから離れることを目標にしましょう。じょく創(床ずれ)の予防や食欲の向上につながります。また、寝・食を区別する上でも車椅子は重要な役割を果たします。車椅子を使いこなせるようになった人は屋外に出ることを目標にしましょう。外出ができれば、生活範囲が広がって意欲の向上につながります。
  • こうした福祉機器の活用は在宅の高齢者だけでなく、施設入所中の人にとっても大切なことです。医療・福祉関係者が、患者や入所者に積極的に機器利用を促し、自立を勧めることが、在宅復帰への近道となるでしょう。
  • 他にも、入浴担架や体位変換器を始め多くの福祉機器が開発され、給付・貸与の制度対象になっているものも増えています。 国では新しい機器の開発に積極的に取り組み、自立と介護を側面から支援しています。


手すりをつけ 段差をなくし 住みやすく アイデア活かした住まいの改善

[ 住環境の整備促進 ]

  • 高齢者は、たとえ麻痺などがなくとも、筋力の低下、平衡機能や目、耳の衰え等から転びやすくなっています。そのため、若い人には何でもない家の中の段差でも高齢者には障害物となって立ちはだかります。住宅内でも廊下、浴室、寝室、トイレ、階段などではしばしば転倒事故が起こります。それに骨粗鬆症を合併していると、ちょっと転んだだけで骨折し、しかも骨折が直りにくいため、寝たきりになりがちです。
  • 手すりの取り付け、段差の解消、滑り止めの処置、適切な証明の設置など、廊下、階段、トイレ、浴室等の住環境の改善により、できるだけ動きやすく、安全で住みやすくする工夫が必要です。


家庭 でも社会でも 喜び見つけ みんなで防ごう閉じこもり

[ 社会参加の重要性 ]

  • 老後は孫の世話や自分一人だけの趣味に生きがいを求めることが理想とされたのは昔のことです。社会との関わりを持たず、一日中何もしないで家の中に閉じこもっていることは、運動機能の低下や意欲の消失を招くことから、寝たきりの前兆とさえいわれています。人生80年時代の今日にあっては、仕事や子育てが終わってからも家庭や社会の中で一定の役割を持ち、主体的な生活を送ることに喜びを感じていくことが、心身の機能の低下を防いで寝たきりを予防することになります。
  • 高齢者が日常生活の中で喜びを持って取り組むことのできる役割については、個人個人が置かれた状況によって大きく異なるので一概には言えませんが、その活動の場がその高齢者の生活している場の濃く身近にあること、過去の経験や知識を生かせること、他人に良い影響を与えるものであること、そして何と言っても心から楽しめるものであることなどが基本になるでしょう。
  • 社会、家族の一員として、できるだけ長く役割を持ちつづけましょう。


進んで利用 機能訓練 ディ・サービス 寝たきりなくす人の和 地域の輪

[ 地域の保健・福祉サービスの積極的利用 ]

  • 地域においては、在宅の高齢者の為に、保健サービスとして健康相談、機能訓練、保健婦による訪問指導などが、また、福祉サービスとしてホームヘルパー、ショートステイ(老人ホームの短期滞在)、デイ・サービス(日帰りで受ける介護サービス)などの各種事業が実施されています。こうしたサービスを積極的に利用して、日常生活活動(ADL)の維持を図り、寝たきりを予防しましょう。
  • また、介護者自身の高齢化や女性の社会進出などにより、家庭での介護が難しくなってきています。一方、家庭介護が可能な場合でも家族の力だけでは、どうしても限界があります。このような場合には、本人や家族だけで悩みを抱え込まずに、積極的に相談する事が必要です。また、身近な保健所、市町村役場、福祉事務所等でも随時相談におおじてくれます。専門スタッフに相談すれば必ず力になってくれます。