高齢者の生活機能


人が生きていくための機能全体を「生活機能」といいます。とくに高齢期では自立した生活を維持する能力は重要であり、世界保健機関(WHO)は生活機能の自立を高齢期の健康の指標とすることを1984年に提唱しています。
 高齢者の生活機能としては、基本的日常生活動作能力(Basic Activity of Daily Living;BADL)と呼ばれる、歩行や移動、食事、更衣、入浴、排泄、整容などの基本的な身体動作がよく知られています。
 しかし、生活機能にはBADLだけでなく、手段的日常生活動作能力(Instrumental ADL;IADL)と呼ばれる、交通機関の利用や電話の応対、買物、食事の支度、家事、洗濯、服薬管理、金銭管理などのより複雑な生活関連動作、さらには状況に対応する能力や社会的役割を担う能力などさまざまな水準があります。
 Lawton, M.P.は高齢者の生活機能について、単純なものから複雑な順に、生命維持、機能的健康度、知覚・認知、身体的自立、手段的自立、状況対応、および社会的役割からなる7段階の階層モデルを提唱しています。


生活機能の指標
 BADLの指標として、Katz IndexやBarthel Indexがよく知られています。IADLの指標としては、LawtonとBrodyによる尺度、Fillenbaumによる尺度などがあり、より高次の生活機能の評価を行なうことを目的として研式活動能力指標がよく知られています。これは、IADL、知的能動性、社会的役割の3つの下位尺度について評価することも可能な尺度です(表1)。

表1.老研式活動能力指標